真昼の月
あと数時間父が帰ってくるのが遅かったらあたしは本当に失血死していたらしい。
気がつくと病院の処置室にいた。
心配そうな顔で父があたしを見ている。

「どうしたんだ聖羅、お父さんが書類を忘れて出先から家に戻ったら、お前が風呂場で倒れていた」

風呂場?あたしが倒れたのは自分の部屋だったのに何で風呂場にいたんだろう?

記憶が飛んでいた。手首を切ったことだけはわかる。後のことは思い出せない。
しかし、もしあたしが風呂場で倒れていなかったら父はあたしの部屋を覗いたりしないだろうし、結果的には良かったのだろう。
でも死んでもかまわなかったんだけどね。

あたしは何も望まないしもうだれにも期待することはしないから。

それからあたしはひたすら勉強に打ち込んだ。

勉強していると余計なことを考えないですむ。クラスの女子を見返したい気持ちでいっぱいだった。どうせ無視されているんだからこっちもそのほうが無駄な時間を作らないで都合がいい。
だけど辛かった。精神的他殺にあいながら一人で立っているのは。


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