真昼の月
すっかり湯冷めしてしまったあたしはテーブルの上に残ったビールを飲んで、くしゃみをした。
ショックで傷が開いたみたい、物凄く痛い。傷の少し上を握ってじっとしたまま痛みをやり過ごす。
はぁ……一日に何度もつくため息がまた出る。

クロゼットから下着とトレーナーとコットンパンツをとりだして身に着けた。

包帯を巻きなおし髪を包んだバスタオルをはずして洗面所でドライヤーをかける。

しばらくヘアサロンにも行っていない髪は伸び放題でなんだかみすぼらしく所帯じみている感じがする。
くるくると髪をねじってバレッタで止める。鏡の中の自分は他人のようによそよそしい。青白くてほほがこけていて死人のようだ。

「あたし、もう死んでるね」

「そうみたいね」

「それならいっそ本当に死ぬ?」

「それもいいんじゃない?」

「どうやって死ぬ?」

「わかんない。でも死に方なら、トモが探してくれるよ」

「凍死? 練炭?」

「笑っちゃう。そんなに簡単に死ねるならとっくに一人でやってるわ」

死ぬときは絶対ひとりがいい。青く澄んだ空の下で仰向きになって死ぬんだ。意識がなくなる最後まで空を見つめていたい。
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