真昼の月
まともな食事
聖羅ちゃん」

「はい」

「元気?」

「……じゃないです」

「そう?ちゃんと食べてる?」

「食べてない」

「だめよ、おなかすかせてちゃ」

真理子さんは優しい。さすが二児(といってももう大きいけど)を育て上げた母親だ。

「はい」

「近くまで来たからよって見たんだけど、ドア開けてくれる?」

「いいけど、散らかってます」

「気にしないわよ」

「はい」

あたしは素直にドアを開けた。
しばらく会わないうちに真理子さんの綺麗さに磨きがかかっている。ちょっと後光が射す感じで気後れがした。

「聖羅ちゃんのお部屋来るの久しぶりね」
「そうですね」

「ごめんなさい、今何もないの。コーヒーも切らしてるし。買い物行かないから」

「いいのよ、そう思って買い物してきたから」真理子さんは足元のスーパーの袋を掲げて見せた。重そうだ。

「そんな……いいのに」

「わたしね、お昼まだなの。よかったら聖羅ちゃんわたし何か作るけど、食べてくれる?」

「いいんですか?」

「もちろん」真理子さんは微笑んだ。笑うと綺麗な歯が覗いてかわいらしいハムスターみたいになった。

「キッチン綺麗にしてるのね」

「何もしないですから……そのまま」

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