真昼の月
「聖羅ちゃん病院行ってる?」

「いえ」

「わたしのね、お友達がカウンセラーやってる病院を紹介するけど、行かない?」

「……」
あたしは黙り込んだ。

「無理にとは言わないわ。もちろん。だけど聖羅ちゃんが苦しかったらやっぱりいったほうがいいと思うの。夜はちゃんと眠れてる?」

「いえ」

「不眠のお薬貰うだけでも違うと思うんだけど、どうかしら?」

「今はまだ行きたくない。行く元気ないです」

「そっか。それなら行けるようになったときは電話をくれるかしら?メールでもいいけど」

「わかりました」

「お父さんね、聖羅ちゃんのこと心配してた」

「父が心配……ですか」

「ええ」

何かの間違いだ。そうでなければ真理子さんの単なるおせっかいだ。

「あの自分のことしか考えられない人が心配ですって?どうせ心配するなら3歳のときに戻って心配してください。あたしはもう大人です。人の心配とか同情は結構です。生活費振り込んでもらっているだけでいいです。ちゃんと自立できてなくてごめんなさいって言っといて下さい」

真理子さんは沈黙した。

「余計なこといってごめんなさいね」
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