真昼の月
なぁにおぉいぃっているんだああああ?」
父の声が再生速度を落としたCDみたいにぐぉぉんと響いた。
「まぁりぃこぉさんにきいぃて、
びょおぉぉいぃんまで
おくろぉおおうとおもってきたんだあぁぁあああ・・・・・・」

ぐぉおおおおん……

父の顔がSF映画に出てくるCG画像のロボットのようにうねりながらあたしに迫ってくる。

ロボットの顔面の合金が溶け出してあたしの足元に流れ出してくる。

いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

絶叫して部屋のドアを閉めた。
そのまま走って机の前に行きカッターナイフをふり上げ、
右肘の内側、昨日切った傷の包帯の上にぐさりと突き刺した。

かなり深い。見る間に包帯が朱に染まっていく。
あたしは白い包帯が赤くにじんでくるのを見届けて、
フェードアウトするバラードを聴くようにゆっくりと気を失っていった。
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