真昼の月
あたしの居るところは、真っ白い壁と天井、窓には柵がしてある。
床に敷かれたマットレス、部屋の隅にはトイレがひとつ。
ここはどこだろう。
あまりに現実感が薄いので夢の中なのだと思う。
夢ならもう1度目を瞑って二度寝すればまた醒める。
あたしは目を瞑った。ゆっくりと目を開ける。
情景は何も変わらない。
音もしない。シーンとする静寂の音さえも。
なんだか平坦な空気が流れる。音も吸い込む部屋らしい。
ぼんやり天井を見上げて虚ろになっていると、
どこからか人の気配がしてドアが開かれた。
「気がついたかな?」白衣を着た若い医師と中年の太った女性の看護士が入ってきた。
「君の名前は?」医師が尋ねた。
「たかはた、せいら・・・・・・です」
「年齢を教えてください」
「21です」
「気がついたみたいだね。ここに運ばれたときのこと覚えてる?」
「病院みたいだけど、ここどこですか?」
彼はここが市内の総合病院の精神科であることを告げた。
ここは保護室で、あたしは手首を切って保護入院の措置を受けたことも、
そのとき初めて知った。
「今日がいつかわかる?」
「10月21日」
「23日だよ。まる2日間意識がなかったんだ」
「2日・・・・・・」
「そう。しばらく入院してもらうことになるよ」医師は言った。
「しばらくって・・・・・・どれくらい?」
「まずはここで、ゆっくり休んでもらう。それからだね。体力も落ちているみたいだし。ふらつかない?」
「ふらふらする」
「ここに来る前に、夜は眠れていましたか?」
「いいえ」
「そう。眠剤出しておくからね。きちんと飲んでください。それと心を落ち着かせる点滴を打つからね」
医師は看護士に処置を命じた。
看護士は無言でうなずくと、あたしの腕に血圧計のベルトを巻いて血圧を測った。
次に腕をしごいて血管を浮かせ
「ちょっとチクっとしますよ」といって点滴の針を左腕の静脈に差し込んだ。
床に敷かれたマットレス、部屋の隅にはトイレがひとつ。
ここはどこだろう。
あまりに現実感が薄いので夢の中なのだと思う。
夢ならもう1度目を瞑って二度寝すればまた醒める。
あたしは目を瞑った。ゆっくりと目を開ける。
情景は何も変わらない。
音もしない。シーンとする静寂の音さえも。
なんだか平坦な空気が流れる。音も吸い込む部屋らしい。
ぼんやり天井を見上げて虚ろになっていると、
どこからか人の気配がしてドアが開かれた。
「気がついたかな?」白衣を着た若い医師と中年の太った女性の看護士が入ってきた。
「君の名前は?」医師が尋ねた。
「たかはた、せいら・・・・・・です」
「年齢を教えてください」
「21です」
「気がついたみたいだね。ここに運ばれたときのこと覚えてる?」
「病院みたいだけど、ここどこですか?」
彼はここが市内の総合病院の精神科であることを告げた。
ここは保護室で、あたしは手首を切って保護入院の措置を受けたことも、
そのとき初めて知った。
「今日がいつかわかる?」
「10月21日」
「23日だよ。まる2日間意識がなかったんだ」
「2日・・・・・・」
「そう。しばらく入院してもらうことになるよ」医師は言った。
「しばらくって・・・・・・どれくらい?」
「まずはここで、ゆっくり休んでもらう。それからだね。体力も落ちているみたいだし。ふらつかない?」
「ふらふらする」
「ここに来る前に、夜は眠れていましたか?」
「いいえ」
「そう。眠剤出しておくからね。きちんと飲んでください。それと心を落ち着かせる点滴を打つからね」
医師は看護士に処置を命じた。
看護士は無言でうなずくと、あたしの腕に血圧計のベルトを巻いて血圧を測った。
次に腕をしごいて血管を浮かせ
「ちょっとチクっとしますよ」といって点滴の針を左腕の静脈に差し込んだ。