真昼の月
 ここに入ってから父も真理子さんも一度も面接に現れなかった。
やっぱりいらない子だからだ。
あたしはそう思っている。
来て欲しいのか欲しくないのかそれすらも自分ではよく把握できていないのだけど、
一日中何もしないで誰にも逢わないでいると、
誰でもいいから話がしたいという欲求にかられてしまう。
ここは身内しか面接のこられない場所らしい。
あたしの身内といったら父と真理子さんしかいない。
父のことは恐れたり憎んだりしながらも微かに来て欲しいという欲求は見え隠れしているのが自分でもわかる。
血がそうさせるのかもしれない。
憎しみを持ちながら求めてしまう切ない気持ちがあたしを支配する。
どうしていいかわからない。
逢えばまた極端な行動に走るのは目に見えている。
それを分かっていて病院側はあわせようとしないのかもしれない。
静かで落ち着いた状況を作ろうとさせているのかもしれない。
あたしには分からないことだけど。
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