真昼の月
友達
「聖羅ちゃーん談話室いこー」
点滴が終わって針を抜いているときに杏奈がそういった。
「うん」
あたしは頷いて杏奈に連れられて談話室に向かう。杏奈は自販機で缶入りのカフェオレを二つ買い、
ひとつをあたしにくれた。やさしい子だなと思う。
カフェオレを飲みながらあたしたちはぽつりぽつり話し始めた。
「聖羅ちゃんなんの病気?あたしは解離」
「かいり?」
「解離性人格障害って言うんだって」
「なあに?難しそうな名前」
「解離性人格障害というのはね、簡単に言うと多重人格のことなんだって。あたしの部屋には
いろんな人がいて次々に出ようとするの。ある人が外に出るともうひとりの人は出てこれなくて
その間、記憶がなくなっちゃうんだって」
多重人格は聞いたことがあるけれど、
実際その病気にかかっている人を見るのは初めてだった。
「いろんな人が出てくると混乱しない?」あたしはそう聞いてみた。
「混乱って言うよりもね、物凄く寂しい気持ちになるの。はじめはみんな杏奈みたいに部屋にいろんな人を抱えて生きているんだって思ってたんだけど、先生にそれを言ったら,え?っていう顔されて、いっぱいいるんだね?って聞き返されたの。そのとき自分の中にいろんな人がいるのは自分だけなんだんなあってわかって、すごく心細くなったの。そういう気持ち、聖羅ちゃんわかる?」
「わかる」あたしはそう言った。
「あたしは解離なんとかって言う病気ではないけれど、誰にも理解されないという辛さみたいなものはなんとなくだけどわかっているつもり」
「ほんと?」杏奈は無邪気に顔をほころばせた。
「うん」
「そっかあ。よかった」
「うん」わたしは微笑んだ。
「聖羅ちゃん笑うとかわいいね」
「えー?」
「聖羅ちゃんは多分杏奈よりお姉さんだと思うけど、笑うとかわいい」
「ほんと?」
お世辞なんか言わないよ、と杏奈は口を尖らせた。
「ありがとう」
点滴が終わって針を抜いているときに杏奈がそういった。
「うん」
あたしは頷いて杏奈に連れられて談話室に向かう。杏奈は自販機で缶入りのカフェオレを二つ買い、
ひとつをあたしにくれた。やさしい子だなと思う。
カフェオレを飲みながらあたしたちはぽつりぽつり話し始めた。
「聖羅ちゃんなんの病気?あたしは解離」
「かいり?」
「解離性人格障害って言うんだって」
「なあに?難しそうな名前」
「解離性人格障害というのはね、簡単に言うと多重人格のことなんだって。あたしの部屋には
いろんな人がいて次々に出ようとするの。ある人が外に出るともうひとりの人は出てこれなくて
その間、記憶がなくなっちゃうんだって」
多重人格は聞いたことがあるけれど、
実際その病気にかかっている人を見るのは初めてだった。
「いろんな人が出てくると混乱しない?」あたしはそう聞いてみた。
「混乱って言うよりもね、物凄く寂しい気持ちになるの。はじめはみんな杏奈みたいに部屋にいろんな人を抱えて生きているんだって思ってたんだけど、先生にそれを言ったら,え?っていう顔されて、いっぱいいるんだね?って聞き返されたの。そのとき自分の中にいろんな人がいるのは自分だけなんだんなあってわかって、すごく心細くなったの。そういう気持ち、聖羅ちゃんわかる?」
「わかる」あたしはそう言った。
「あたしは解離なんとかって言う病気ではないけれど、誰にも理解されないという辛さみたいなものはなんとなくだけどわかっているつもり」
「ほんと?」杏奈は無邪気に顔をほころばせた。
「うん」
「そっかあ。よかった」
「うん」わたしは微笑んだ。
「聖羅ちゃん笑うとかわいいね」
「えー?」
「聖羅ちゃんは多分杏奈よりお姉さんだと思うけど、笑うとかわいい」
「ほんと?」
お世辞なんか言わないよ、と杏奈は口を尖らせた。
「ありがとう」