真昼の月
飛び切りハンサムと言うわけでもないが切れ長の一重まぶたでそれが少し冷たい印象を与えている。
少し伸ばした髪は癖があり、ウェーブがかっている。手足が長い。「やあ」と挙げた左の掌が大きい。
あたしはちょっと恥らった。
なんていっていいかわからなかった。

「遠いところきてくれてありがとう」

「そうだねー遠かったねー。でも3時間できたよ。途中、飛ばしたから」

「そんなに飛ばさなくてもゆっくりで良かったのに」

「聖羅に逢いたくて飛ばしたんだ」

「あたしこんな人だよ」あたしははにかんで笑った。

「笑うとかわいい」
トモはそういった。「そうかな」

「そうだよ。もっと自分に自信もっていいよ」
そんな風に言われたのは初めてだったのでどきどきする。

「どこにいく?」
聞かれてあたしは戸惑った。

「もし行けるなら行ってほしいところがあるの」あたしはトモにプラネタリウムが見たいとねだった。

「プラネタリウムかあ、いいね」

「二人で同じ場所で月を見たいから」

いいよ、とトモはいい、あたしたちは駅前の科学博物館にプラネタリウムを見に行くことにした。
ところがプラネタリウムの開始時間は最終しか残っていない。午後5時からだった。

「病院に戻るんだろう?時間ないよね」
科学博物館の窓口で、トモは戸惑っていた。

「でも見る」珍しくあたしは断固として言い切った。

「開始時間まであと3時間あるけど、歩き回っていたら疲れるだろう?」
あたしは頷いた。

「もし、聖羅がいやじゃなければ、の話だけど、そのう・・・・・・ゆっくり休めるところに行く?」

「うん」確かに身体が言うことを聞かなくなってきた。わずかに震えが来ている。

「少し横になったほうがいいね」

「そうさせてほしいな」

トモはあたしを科学博物館の外で待たせ、駐車場から車を出してきた。
あたしは車に乗った。リクライニングシートに体を埋めた。
トモはインター近くのホテル街に車を乗り入れた。そして地味でシックなつくりの建物の中に車を乗り入れた
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