真昼の月
月が出ている。真昼の月だ。あたしは服を着せられてトモに抱かれたまま車に乗せられた。
薄く開けた瞳の端に水色の空にかかる血の気もなく光もない顔をした白い半月が引っかかっていた。
トモは車を出して、高速に乗り上げた。意識が薄らいでくるけれど車に乗せられていることだけはわかる。
時々車体が揺れるのも。でももう意識をはっきりさせているのは困難だ。
白い月、白い月・・・・・・半月はあたしの心・・・・・・「月は心を元気にする・・・・・・」
助手席のシートを倒してにあたしは眠りこんだ。

何が起こったのかわからなかった。救急車の音だけが響いていた。
大型トラックと乗用車が正面衝突している。
乗用車が反対車線から飛び出したのが原因だった。乗車していた運転手と同乗者は即死。

あれは・・・・・あたし・・・・・・後頭部がひしゃげているのに顔だけは綺麗だ。
良かった・・・綺麗なまま死ねる・・・・・・でも どうしてだろう? よくわからない。頭が痛い。そばにいるのは
トモだ。手を繋いでいる。良かった。これで離れないね。あたしたち・・・・・・
闇は生き物のようにみずみずしく凄惨な現場をおし包んでいた。
死人のようだった昼間の月がブルーブラックの闇にいっそう白くプラチナの輝きを増した。
                                        
 ~END~
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