真昼の月
あたしはペン立てからカッターナイフを取り出した。
食卓を立ち自室に戻った。どこがどうというわけでもないのだが、むしゃくしゃした気分が抜けない。

左利きなので右手の手首に歯を当て、すっと刃を滑らせる。感情のやり場を自傷に求めてしまったので勢いがついて思いのほか深く切ってしまった。

止血しようとして包帯を探したけれど、居間の戸棚に薬箱があるのを思い出して暗い気分になった。

今とりに行く気になんかなれない……どうしよう。

あたしは利き手で切った手首を強く握った。
< 7 / 60 >

この作品をシェア

pagetop