はつこい・いちご【短編】
私は、音のした方を見る。


いきなり顔を見ることは出来ないので、
とりあえず足元から。


男物の制服。

学ラン。

そりゃそうだ。


私はそーっと、
そーっと視線を上へ……。


あのときと一緒だ。


初めて出会ったときも、
すぐには彼の顔を見られず、
少しずつ上を向いたっけ。


「…………」



私が彼の顔を見ると、
すぐに切れ長の澄んだ瞳が、
目に飛び込んできた。


「…っ」


目が合っている。


お互いにその目をそらすことが出来ず、
雨音をバックに、
立ち尽くしている。


沈黙を破ったのは石田くんだった。


「…傘、」


話しかけられた?
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