はつこい・いちご【短編】
知らない人。


間違いではない。


私だってこんな子知らないし、
この子だって、私なんて
名前も顔も知らないだろう。


でも…。
石田くんは……。

チラリと石田くんを見るが、
目が合うことはない。

その瞬間を彼女に見られていたようで、
少しイジワルそうにニヤけた。


…イヤな予感がする。


「この子たちだぁれ~?
湊の知り合いか何か?」



石田くんのバッグをつつきながら、
その子はたずねる。


「えっと…」

困ったように言葉を詰まらせる。


言わないで。

言わないで。



知らない人だなんて。


お願い言わないで。



私はあなたを知ってるから。

あなたも私を知ってると。

心のどこかで。

思っていたいから。





「別に…知り合いとかじゃないけど」




ザーっと、
雨の音がいっそう強くなった。





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