はつこい・いちご【短編】
1 ひとめぼれ
9回表2アウト、ランナーは三塁にいる。
彼は思いっきりバットを振って一塁へ駆けた。
ズサっ……。
ヘッドスライディングで、砂ぼこりが舞う。
私は両手を握っていた。
誰かが鼻をすする音が聞こえる。
私の目からも、熱い涙がこみ上げていた。
お願い。
セーフになって。
そうしたら、同点に追いつける。
まだ、南陵高校の夏は、終わらない。
「アウトッ、スリーアウトー!!」
審判の手が上にあげられる。
瞬間、三塁側スタンドからは洪水のように歓声が溢れだした。
負けた。
負けたんだ…。
夏の甲子園、県大会の予選。
県立南陵高校は、準決勝まで残っていたただ一つの公立高校だった。
その最後の公立高校が、決勝の舞台に立つことなく、
ベスト4で姿を消すのだった……。
彼は思いっきりバットを振って一塁へ駆けた。
ズサっ……。
ヘッドスライディングで、砂ぼこりが舞う。
私は両手を握っていた。
誰かが鼻をすする音が聞こえる。
私の目からも、熱い涙がこみ上げていた。
お願い。
セーフになって。
そうしたら、同点に追いつける。
まだ、南陵高校の夏は、終わらない。
「アウトッ、スリーアウトー!!」
審判の手が上にあげられる。
瞬間、三塁側スタンドからは洪水のように歓声が溢れだした。
負けた。
負けたんだ…。
夏の甲子園、県大会の予選。
県立南陵高校は、準決勝まで残っていたただ一つの公立高校だった。
その最後の公立高校が、決勝の舞台に立つことなく、
ベスト4で姿を消すのだった……。