雪解け水
―ガチャ……



「ふぅ。」



ひとつため息をついたところであることに気付く。




玄関にいかにも高そうな女物のヒールがある。


それは、今からアタシが脱ごうとしたローファーよりも、何倍も"此処"に馴染んでいるように感じられる。



それはこの家が高級だからか…
それとも、アタシ自身がこの家に馴染めていないからだろうか…。




とにかく、今この家にはアタシがもっとも関わりたくない人がいるわけだ。



この家はアタシのものではなくあの人のものなのだから、邪魔なのはアタシの方なのだろうけれど。




*
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