甘くないコーヒー
食事が終わり、オレは買い物をし、明日見は仕事へと戻った。



店を出ると、雨が降っていた。

走って帰るか…と考えていると

明日見のミニバンが、オレの目の前に止まり、明日見が窓から顔を覗かせた。

「送ってあげるよ。」

「いいのか?」

「いいよ。車狭いけど」

オレは助手席に乗り込んだ。
確かに車内は狭かったが、快適であった。コーヒーの香りも微々たるもので、少し驚いた。


「雨空も好きなのか?」

「うん。好きだよ。雨は植物や人間にとって大切だし、たまには空だって、泣きたいだろうし。」

ハンドルを握る明日見の横顔は、少し寂しそうだった。


「そうだよな。人間だって、空だって泣きたい時ぐらいあるよな。」


明日見は返事をしなかったが、その瞳には、うっすらと涙が溜まっていたのを、オレは見逃さなかった。

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