甘くないコーヒー

“田所美雪”との約束の３０分前にファミレスに着いた。

明日見は、ひどく緊張しており、唇が少し紫色をしていた。


約束の時間の少し前に、ドアベルが鳴り、中年の女性が店内に入ってきた。その女性は、真っ直ぐにオレ達の方へと向かってきて言った。

「あなたが今日子の娘さんね？ そっくりだわ。」
明日見は、ぎこちない笑みを浮かべて

「お忙しいところすみません。」

「いいのよ。」と田所美雪は、高校時代の思い出を語り始めた。


一通り話し終えたところで

「私から今日子に連絡しましょうか？」

と申し出た。

明日見は、一考し

「母には私から連絡したいんです。」

と真っ直ぐに田所美雪を見て言った。


「そうね。分かったわ。」

田所美雪は今日子の連絡先を明日見に教えると、
「あなたは本当に今日子に似てるわ。会えるといいわね。」

とドアベルを鳴らし、出て行った。