夏の日の終わりに
 冬が過ぎ、緩んだ空気とともに春が訪れる。僕は三年生への進級を前にしていた。

「お前、進路どうするんだ?」

 進路指導とかいう面倒なものに呼び出されていた。正直こんなものが何になるのか僕には理解出来ない。

「どうって?」

「進学するのかどうかってことに決まってるだろ」

 学校の興味は進学させて実績を大げさにアピールすることだけだ。留年した落ちこぼれの進路などどうでもいいだろうに。

 黙りこむ僕に、さっさと済ませたいとでも言いたいのか、教師は苛立ちながらせっついた。

「将来なにするつもりだってことだ」

「レーサー……」

「馬鹿か?」

 呆れ顔で切り返す教師の言葉くらいは分かりきっている。

「それが悪い?」

 何をするかと聞かれたから答えただけで、何でこうも馬鹿にした態度を取るのだろうか?

 何故教師は生徒の人間性を認めようとしないのだろうか?

 どうして自分の常識の規格から外れた人間を認めないのだろうか?


 不毛の議論なんてごめんだ。

「だから就職にしとけばいいじゃん」

 そう言ってその場を立った。僕は生き急いでいるのだろうか?

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