夏の日の終わりに
 結局は進学する道を選んだのだが、それを決めたのはもっと後のことだ。とりあえず高校三年生は就職クラスと呼ばれる教室で過ごすことが決まった。

 居眠りしようが漫画を読んでようが早弁しようが教師も文句は言わない。とりあえず学校の実績とは関係ない人間どもなど眼中にはないんだろう。

 無難に卒業してくれることだけを目的に、当たらず触らずの退屈な授業が始まった。


 日曜日になるといつものように理子をデートに誘う。しかし前日に電話をした僕は、理子のその言葉に耳を疑った。

「今度の日曜日、どこ行こうか?」

「あ……と。えとね、今度の日曜日は友達と遊びに行くの」

「え?」

 思いも寄らない返事だった。何しろ退院してこの方、僕以外の人間と遊びに行くなんてなかった事だ。

「妙子さん?」

「ううん」

「森君か?」

「違う」

「じゃあ誰?中学んときの友達?」

「高校の友達」

「はあ?」

 僕は不快感を隠せない。しかしそう言われて思い出したが、理子はれっきとした高校生だ。

 一年遅れてはいるものの、通信教育も行っている定時制の高校に通っている。始業式で顔を合わせた同級生と仲良くなったらしい。

 定時制と言うことは多種多様な人間だろう。僕の頭の中には大きな偏見があり、ガラの悪い人間が少なくないと思っている。

 予想通り、何台かの車でドライブに行くということだった。

「何人くらいで行くの?」

「10人くらい、かな」

「男も居るの?」

「うん、いるけど……」

 男のほうが恐らく多いはずだ。

 僕にとっては正直面白い話じゃない。しかしその気持ちとは裏腹に「楽しんでこいよ」と言って、そのまま受話器を置いた。


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