夏の日の終わりに
 こんな時どうすれば良いのか、若く経験が浅い僕には判断がつかない。せめて今まで観た映画やドラマのシーンを参考にするほかなかった。

 そして今までの苦悩や不安を吐露しながら泣き喚く理子の唇に人差し指を押し当てた。

「理子、大丈夫だ。俺がついてるから、だからもう泣くな」

 目をじっと見つめ、選んだ言葉を噛み締めるようにゆっくりと言い聞かせると、理子は諦めたようにうつむいた。


「うん」


 力無く頷いた理子はそれきり泣くのを止めると、再び外の景色を眺めた。

「晴れてきた……」

 雨を降らせた雲が足早に去って行く。そこに隙間が出来ると、隠れていた太陽の光が差し込んだ。

 あたかも光のカーテンが出現したようだ。

「理子、ああいう時って、神様が降りてきてるんだって……知ってた?」

「神様……居るのかなあ」

「居ると信じたいね」

「うん」

 
 次の日、理子は入院した。
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