夏の日の終わりに
 この病院、実は理子の学校の目と鼻の先にある。そのことに気づいたのは、学校の友人らがやけに見舞いに来てることに疑問を抱いた時だった。

 しょっちゅう連中と鉢合わせてしまい、気まずい思いをすることが多い。それでも良識のある連中は僕が来るとすぐに帰るのだが、そうでない──特に男はなかなか帰ろうとはしなかった。

 中には僕の顔を見るなりベッドに腰掛け、やたら親しそうに振舞う奴さえいる。

 考えて見れば、幼い顔つきだが理子は男が放っておかない魅力を備えている。衆目に晒せば、何人も男が寄ってきても不思議じゃないだろう。

 当初はある程度仕方ないと考えていたが、このところ僕の胸中は穏やかでなくなっていた。

(もうどうでもいいや)

 友人の誘いを振り切ってやってきたその日、また連中に囲まれているのを見て僕は投げやりになった。

 ここに僕の居場所は無いように思えてならない。


(いままでの想いって)


 何度も何度も苦しめられてきた。理子の想いをどうにかして受け止めようと努力してきた。これからが一番大変な時じゃないだろうか。

(一緒に乗り越えようって……)


 どうやら僕は一人で空回りしていたらしい。
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