夏の日の終わりに
僕はハンドルに伏せて大きなため息をつくと、仕方なく家路に向かう裏道に方向転換した。
(どうせ間に合わないんだったら……)
今頃ひとりで盛り上げるのに必死だろう。少し友人に悪い気がした。
家にたどり着くと、車庫に入れるのも面倒で玄関前に車を停める。何だか体が疲れきっているようで、降りるのでさえおっくうに感じる。そんな重い足取りで玄関のドアを開けると、母親が血相を変えて飛び出してきた。
「あ、ただいま」
「ただいまじゃないよ、あんた今までどこに居たの!」
その口調はとても尋常なものとは思われない。僕はひとつの可能性を頭に思い浮かべた。
(まさか……)
一瞬にして全身が冷え切った。
「え……どこって……」
「病院から電話があったよ。理子ちゃんがチアノーゼを起こして危篤だって!」
聞いた瞬間、僕はきびすを返す。その先は聞く必要もなかった。
「おい、脩!」
その僕を呼び止めたのは兄だった。
「これを使え」
母親の後ろから銀色の小さなものが飛んでくる。受け取ったそれはバイクのキーだった。これならば時間を半分は短縮できる。
「サンキュ」
受け取るなり二年振りのバイクにまたがると、久しぶりの感慨に浸る間もなくアクセルを全開に開け放っていた。
(どうせ間に合わないんだったら……)
今頃ひとりで盛り上げるのに必死だろう。少し友人に悪い気がした。
家にたどり着くと、車庫に入れるのも面倒で玄関前に車を停める。何だか体が疲れきっているようで、降りるのでさえおっくうに感じる。そんな重い足取りで玄関のドアを開けると、母親が血相を変えて飛び出してきた。
「あ、ただいま」
「ただいまじゃないよ、あんた今までどこに居たの!」
その口調はとても尋常なものとは思われない。僕はひとつの可能性を頭に思い浮かべた。
(まさか……)
一瞬にして全身が冷え切った。
「え……どこって……」
「病院から電話があったよ。理子ちゃんがチアノーゼを起こして危篤だって!」
聞いた瞬間、僕はきびすを返す。その先は聞く必要もなかった。
「おい、脩!」
その僕を呼び止めたのは兄だった。
「これを使え」
母親の後ろから銀色の小さなものが飛んでくる。受け取ったそれはバイクのキーだった。これならば時間を半分は短縮できる。
「サンキュ」
受け取るなり二年振りのバイクにまたがると、久しぶりの感慨に浸る間もなくアクセルを全開に開け放っていた。