夏の日の終わりに
 その空に煙を吹きつけながら、怒りをぶつける。

「殺すなら俺を殺せよ」

 誰に向かって言ったわけじゃない。あえて言うなら天に向かってだ。

(俺は何で死ななかったんだ?)

 今までは自分の運だと思っていた。だが、それで済ませることが出来るのだろうか。

(何で俺の足は治った?)

 僕はどれほど低い確率を引き当てたというのか。それに比べて祖父は、理子はわずかな二択を踏み違えたというのだろうか。

(そりゃないだろ……)

 どうにもならない人生の不条理。僕はそれがどうにも理解できなかった。

「死ぬのは俺だろうが」

 その声に反応する者など当然いない。虚しく夜の空に吸い込まれてゆくだけだ。

(何とか言えよ……クソが)

 その不満を叩きつけるようにタバコを投げ捨てると、もう一本取り出してそれに火を点けた。


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