夏の日の終わりに
藍ちゃん
その日はなぜか胸がざわついていた。
消灯時間がとっくに過ぎ、暗く静まり返った病室。僕は寝付けなくて暗い天井を見上げたまま、ずっと物思いにふけっていた。その思う先には理子がいる。
昼間、彼女から聞いた話が頭に焼き付いて離れないでいた。
どうしてこんなに胸を乱されるのだろうか? と、自問自答してみる。
彼女自身に対する想いか、それとも彼女の境遇に対する同情か……
(たぶんどっちもだな)
僕は理子に対して少なからず特別な感情を抱いていることを自覚していた。そしてその病名──
『骨腫瘍』
その病名がずっと頭に引っかかっている。いったいどんな病気なのだろうか? 分からないということが余計に不安をかき立てる。
そんな物思いを断ち切ったのは廊下をせわしなく走る足音だった。深夜ということを忘れたかのように、看護師らの足音が廊下から響いてくる。
(なんだ?)
その音はなかなか止まらず、病室のドアを開け閉めする音のほかに、カートのキャスターが転がる音も交じった。
少し疑問は湧いたが、それほど興味を引くようなことでもない。そして思考がいったん止まると、襲ってきたのは忘れていた睡魔だった。
そのまま僕は眠りに落ちていた。
消灯時間がとっくに過ぎ、暗く静まり返った病室。僕は寝付けなくて暗い天井を見上げたまま、ずっと物思いにふけっていた。その思う先には理子がいる。
昼間、彼女から聞いた話が頭に焼き付いて離れないでいた。
どうしてこんなに胸を乱されるのだろうか? と、自問自答してみる。
彼女自身に対する想いか、それとも彼女の境遇に対する同情か……
(たぶんどっちもだな)
僕は理子に対して少なからず特別な感情を抱いていることを自覚していた。そしてその病名──
『骨腫瘍』
その病名がずっと頭に引っかかっている。いったいどんな病気なのだろうか? 分からないということが余計に不安をかき立てる。
そんな物思いを断ち切ったのは廊下をせわしなく走る足音だった。深夜ということを忘れたかのように、看護師らの足音が廊下から響いてくる。
(なんだ?)
その音はなかなか止まらず、病室のドアを開け閉めする音のほかに、カートのキャスターが転がる音も交じった。
少し疑問は湧いたが、それほど興味を引くようなことでもない。そして思考がいったん止まると、襲ってきたのは忘れていた睡魔だった。
そのまま僕は眠りに落ちていた。