夏の日の終わりに
周りの音が全く聞こえない。支配してるのは随分と金属的な耳鳴りだけだ。
ぼんやりとした目で周囲を探るが、自分がどこかに座っているようだと認識できたくらいのもので、ここがどこだかは分からない。
(息が……苦しい……)
頭がひどく曖昧な思考しかできない。すぐには状況が理解出来なかった。
(なにしてんだ? 俺は……)
明確な判断が出来なくても、自分が異常な事態に陥っていることくらいは理解できる。言い知れぬ不安だけが朦朧とした頭をうろついて離れない。
長い間そうしていたのかそれとも長く感じただけなのかは分からない。モヤが晴れるように少しずつ、記憶が甦ってくる。
(そうか……ヤッたんだな……)
記憶とともについ今しがた身に降りかかった恐怖に身震いした。
正直、怖かった。
自分が思い描いていた恐怖を遥かに超える恐怖。それは深く脳裏に刻み込まれた。
とはいえ、楽天的な思考は僕の専売特許だ。しばらくは動けそうにないのは分かるが、次にはやはり帰りの手段を模索していた。
「大丈夫か!?」
ようやく聴覚が戻ってきた耳にその声が届く。呼びかけながら一人の男が駆け寄って来るのが見えた。
(まずい)
なにより転倒したところに声をかけられる事ほど恥ずかしいものはない。これほどのダメージはさすがに初めてだが、転倒には慣れている。何度も人前で転倒しては、慌ててバイクを起こして走り去ったものだ。
しかし
「大丈夫……です」
発した声は自分の想像とは限りなくかけ離れていた。快活に返事したつもりだったが、肺を押しつぶされるような痛みが胸を詰まらせる。そして声がまともに出ない事に軽い衝撃を覚えた。
ぼんやりとした目で周囲を探るが、自分がどこかに座っているようだと認識できたくらいのもので、ここがどこだかは分からない。
(息が……苦しい……)
頭がひどく曖昧な思考しかできない。すぐには状況が理解出来なかった。
(なにしてんだ? 俺は……)
明確な判断が出来なくても、自分が異常な事態に陥っていることくらいは理解できる。言い知れぬ不安だけが朦朧とした頭をうろついて離れない。
長い間そうしていたのかそれとも長く感じただけなのかは分からない。モヤが晴れるように少しずつ、記憶が甦ってくる。
(そうか……ヤッたんだな……)
記憶とともについ今しがた身に降りかかった恐怖に身震いした。
正直、怖かった。
自分が思い描いていた恐怖を遥かに超える恐怖。それは深く脳裏に刻み込まれた。
とはいえ、楽天的な思考は僕の専売特許だ。しばらくは動けそうにないのは分かるが、次にはやはり帰りの手段を模索していた。
「大丈夫か!?」
ようやく聴覚が戻ってきた耳にその声が届く。呼びかけながら一人の男が駆け寄って来るのが見えた。
(まずい)
なにより転倒したところに声をかけられる事ほど恥ずかしいものはない。これほどのダメージはさすがに初めてだが、転倒には慣れている。何度も人前で転倒しては、慌ててバイクを起こして走り去ったものだ。
しかし
「大丈夫……です」
発した声は自分の想像とは限りなくかけ離れていた。快活に返事したつもりだったが、肺を押しつぶされるような痛みが胸を詰まらせる。そして声がまともに出ない事に軽い衝撃を覚えた。