夏の日の終わりに
当然、理子を置き去りにするように僕の松葉杖による歩行訓練が始まった。
「おおーう!」
看護師に体を支えられながら、杖に体重をかけて腰を伸ばす。
たった数十センチの視点の差は、また新たな感動を与えてくれた。
一変した風景。
それまで見ていたものと同じものだ。それが妙に違和感を持ち、不思議な光景が広がっていた。
かたわらに落とした視線の先には理子の頭があった。
僕が立った姿を何度も想像してる、と言っていたが、果たしてその印象はどうなのだろうか?
なんとも嬉しそうな理子は、きっと僕が照れるようなことを言うだろう。
「なんだ、理子ってこんなにちっちゃかったんだ」
「ちっちゃくて悪かったね」
それを避けるために先回りして僕は茶化す。
理子は松葉杖を使えた。今日は僕に合わせて松葉杖をついていたが、それでも174センチの僕からは見下ろすほど背が低い。
「でも、脩君って思ったより大きいんだね」
「そう? 普通だよ」
「そうかなあ。いつも座ってるところしか見てなかったからかな」
そう言ってしばらくしげしげと僕の姿を眺めていた。
「なんだよ」
「なんでも」
「見るなよ」
そう言っても、理子は白い歯を見せて含み笑いをしながら、色んな方向から僕を眺めていた。
「おおーう!」
看護師に体を支えられながら、杖に体重をかけて腰を伸ばす。
たった数十センチの視点の差は、また新たな感動を与えてくれた。
一変した風景。
それまで見ていたものと同じものだ。それが妙に違和感を持ち、不思議な光景が広がっていた。
かたわらに落とした視線の先には理子の頭があった。
僕が立った姿を何度も想像してる、と言っていたが、果たしてその印象はどうなのだろうか?
なんとも嬉しそうな理子は、きっと僕が照れるようなことを言うだろう。
「なんだ、理子ってこんなにちっちゃかったんだ」
「ちっちゃくて悪かったね」
それを避けるために先回りして僕は茶化す。
理子は松葉杖を使えた。今日は僕に合わせて松葉杖をついていたが、それでも174センチの僕からは見下ろすほど背が低い。
「でも、脩君って思ったより大きいんだね」
「そう? 普通だよ」
「そうかなあ。いつも座ってるところしか見てなかったからかな」
そう言ってしばらくしげしげと僕の姿を眺めていた。
「なんだよ」
「なんでも」
「見るなよ」
そう言っても、理子は白い歯を見せて含み笑いをしながら、色んな方向から僕を眺めていた。