夏の日の終わりに
その数日後、僕は珍しく昼間からベッドのカーテンを仕切っていた。
着替えをしているわけじゃない。ベッドの上に座る僕の横には理子がいた。
たまにはいちゃつきたいが、そうそう夜中に抜け出すことは出来ない。こうして人の目を避けてひっそりと──とも言えないが、こうでもしないとハグのひとつも出来やしない。
理子はキスを交わすのが好きだった。
ほとんど無言で僕らは何度も唇を重ねる。その時間はこれまで感じたどんな幸福よりも素晴らしいものに思える。
そんな二人だけの空間は突然破られた。
「何してるの!」
いきなりカーテンが開け放たれたそこに立っていたのは、まなじりを裂いて声を荒らげる松阪さんだった。
不意をつかれた僕らには言葉もない。
そんな僕らに、いや正確には理子に松阪さんは怒りをぶつけてきた。
「こんないやらしいこと、病院でしないでくれる」
いやらしい、という言葉に僕は眉をしかめる。大人が考えているような不純なものとは思っていないのだ。しかし他人から見てその区別はつかないだろう。
「あたしが勝手に来たんだもん」
「そんなこと見れば分かるわよ!」
僕は理子を庇いたかったが、いかんせん状況が悪すぎる。火に油を注ぐ結果になっては最悪強制退院ということもある。
「理子、とにかくいったん部屋に戻りなよ」
そう促す僕の言葉に頷いた理子は、渋々ベッドを降りた。そしてうつむいたまま部屋を出て行く。
その姿に僕は心が痛んだ。
(俺の不注意だ)
舞い上がった僕の責任だった。
着替えをしているわけじゃない。ベッドの上に座る僕の横には理子がいた。
たまにはいちゃつきたいが、そうそう夜中に抜け出すことは出来ない。こうして人の目を避けてひっそりと──とも言えないが、こうでもしないとハグのひとつも出来やしない。
理子はキスを交わすのが好きだった。
ほとんど無言で僕らは何度も唇を重ねる。その時間はこれまで感じたどんな幸福よりも素晴らしいものに思える。
そんな二人だけの空間は突然破られた。
「何してるの!」
いきなりカーテンが開け放たれたそこに立っていたのは、まなじりを裂いて声を荒らげる松阪さんだった。
不意をつかれた僕らには言葉もない。
そんな僕らに、いや正確には理子に松阪さんは怒りをぶつけてきた。
「こんないやらしいこと、病院でしないでくれる」
いやらしい、という言葉に僕は眉をしかめる。大人が考えているような不純なものとは思っていないのだ。しかし他人から見てその区別はつかないだろう。
「あたしが勝手に来たんだもん」
「そんなこと見れば分かるわよ!」
僕は理子を庇いたかったが、いかんせん状況が悪すぎる。火に油を注ぐ結果になっては最悪強制退院ということもある。
「理子、とにかくいったん部屋に戻りなよ」
そう促す僕の言葉に頷いた理子は、渋々ベッドを降りた。そしてうつむいたまま部屋を出て行く。
その姿に僕は心が痛んだ。
(俺の不注意だ)
舞い上がった僕の責任だった。