夏の日の終わりに
「先生、俺のクラスってどこ?」

 学校に着いた僕はそのまま職員室へ行き、かつての担任に声を掛けた。

「おお、来たか」

 一応は歓迎するような言葉を掛けてはきたが、真意はどうだろう? 恐らくは「やっかいな奴が戻ってきたな」くらいに思ってたのではないだろうか。

 教えられたクラスへと向かう途中、学年が違う校舎に見知った顔はひとつとして見当たらない。皆僕より一歳下の後輩だ。

 そんな場違いな空気の中、目立つ松葉杖をついて教室の扉を開けた。

 別にホームルームが始まってるわけじゃない。しかし、まだ始業までの間があるざわついた教室が徐々に静かになってゆく。そして全員の視線が集まるなか、僕は一番近くにいる生徒に一言尋ねた。

「おい、どっか席が空いてるだろ。どこだ?」

 これから過ごすクラスの雰囲気。その印象は最悪だった。


 授業が始まる前に窓際の生徒に席を替わるよう命令すると、授業が始まっても外をずっと眺めていた。教師も僕に対する対応が変わったようだ。どんなわがままにも許容する態度を見せ、遅刻、早退にも文句を言わなくなった。もちろん居眠りにもだ。

(理子……)

 僕は理子に無性に会いたいと思っていた。あそこに行けば僕は普通の人間でいられるのだ。そして僕を包んでくれる人がいる。

 その想いが毎日のリハビリへと向かわせた。しかし──
< 67 / 156 >

この作品をシェア

pagetop