夏の日の終わりに
暗鬱な悩みの堂々巡りを吹き飛ばすように、大気を震わせて夜空に大きな花火が広がった。
「始まった!」
僕らは一斉にもっとよく見える場所へと移動した。松林を抜けると、広い海が鮮やかな彩りを波間に映し出している。見上げた夜空には大輪の花火が次々と上がり、その美しさを競いあっていた。
「きれい……」
そう何度も呟きながら見上げる理子の目は、一発も見逃すまいとするかのように瞬きすら惜しんでいる。
その瞳にはいくつもの花火が映りこみ、キラキラと輝いていた。
僕はそんな純粋な理子が好きだった。
理子は自分を見つめる視線に気づいたのか、その目を不意に向けてきた。頬を照らす光が赤から青に変わった。
微笑んだ口が開いて、そして──
その時一際大きな花火が夜空に咲き、その轟音で理子の言葉はかき消された。でも僕にはその言葉の意味が分かっている。
『また来れる?』
と、言ったはずだ。
僕は頷き、そして花火に負けないよう大きな声で言った。
「また来年も来ような」
その言葉はしっかり届いたようだ。理子は白い歯を見せて満面の笑みを浮かべた。
過ぎ行く夏を惜しむかのようにそれからも花火は咲き誇った。僕はそれを眺めながら理子と手を繋ぎ、来年という近い未来に想いを馳せていた。
「始まった!」
僕らは一斉にもっとよく見える場所へと移動した。松林を抜けると、広い海が鮮やかな彩りを波間に映し出している。見上げた夜空には大輪の花火が次々と上がり、その美しさを競いあっていた。
「きれい……」
そう何度も呟きながら見上げる理子の目は、一発も見逃すまいとするかのように瞬きすら惜しんでいる。
その瞳にはいくつもの花火が映りこみ、キラキラと輝いていた。
僕はそんな純粋な理子が好きだった。
理子は自分を見つめる視線に気づいたのか、その目を不意に向けてきた。頬を照らす光が赤から青に変わった。
微笑んだ口が開いて、そして──
その時一際大きな花火が夜空に咲き、その轟音で理子の言葉はかき消された。でも僕にはその言葉の意味が分かっている。
『また来れる?』
と、言ったはずだ。
僕は頷き、そして花火に負けないよう大きな声で言った。
「また来年も来ような」
その言葉はしっかり届いたようだ。理子は白い歯を見せて満面の笑みを浮かべた。
過ぎ行く夏を惜しむかのようにそれからも花火は咲き誇った。僕はそれを眺めながら理子と手を繋ぎ、来年という近い未来に想いを馳せていた。