君の音
「っ・・・」

沖田さんの刀をうちは金属製の指輪で受け止めた。

これは元彼の名残で、適当にポケットに入れたもの。まさかここで役立つとは・・・。

ちなみにそいつと付き合った理由は、土方様に顔が似ていたから。という単純な理由。

分かれた理由は、そいつが土方様を馬鹿にしたから。流血沙汰になった記憶がある。

「ああ、指輪ですか・・・でも、その指輪はそう持たないですよ」

刀は徐々に切れている。すっごく微妙に刀の刃は進行している。

そろそろ指輪で受け止めるのもきつくなり、うちは沖田さんの懐に入って刀を避ける。

そしてそのまま、沖田さんの着物の襟を掴んで、地面に投げ飛ばした。

「あ・・・ご、ごめんなさぁぁぁぁぁいっ!」

謝罪の言葉を並べながら、うちは屯所の門をくぐって町に逃げた。

大勢の人の間を通り抜け、屯所から随分と遠くなった場所で足を止めた。

息を整えている最中、四方から気配を感じ取った。

前を見ると、浪士。後ろを見ても浪士。左右を見ても浪士。

何処を見ても浪士という、浪士カーニバルに陥ったうち。

「うちの人生は・・・まだ終わってなぁぁぁいっ!」

土方様にせっかく会えたのに終わらせるかぁぁぁっ!という心意気で、前の浪士に突っ込んだ。

浪士は刀を大きく振り上げた。その隙を狙って、うちは浪士の鳩尾に飛び蹴りをお見舞いしてやった。

浪士は軽く吹っ飛んだ。その様子を仲間の浪士はただ、呆然と見ていた。

「この・・・くそアマァっ!」

その言葉を聞いた途端に、ぷちんと再び何かの音が頭の中で鳴り響いた。

素早く地を蹴って、後ろの浪士の顔面に飛び乗った。

スクールローファーの踵の部分が浪士の鼻にめり込む。

赤い液体がその場に飛び散った。無論、鼻血である。

「女をなめんな馬鹿野郎っ!」

倒れた浪士の刀を奪い取ると、身を低くして右の浪士の懐に突っ込んだ。

その際に、刀の先端部分を浪士に向けて。

再び飛び散る血。今度は鼻血ではなく、腹から出た浪士の血。

服は血で赤く染まり、刀を抜き取ると、残りの浪士を見た。

残りの浪士は、顔を青くしてすぐ逃げ去った。

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