lacrimosa
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「リュカは本当に、死んじゃったんだね」
自分の気持ちに不器用な少年リュカ、生きていたら彼に会ってみたかったのに。
彼が自分が死んだあとのバスチアンとアンジェロのことを知ったら、なんと言うだろう。
バスチアンの口から紡がれる物語の登場人物アンジェロと、自分が1ヶ月接してきた彼はまるで別人のよう。
そのいつでも崩れることなかった微笑みの裏にはそんな悲しみと、覚悟が潜んでいたのだ。
(…アンジェロは強くなったんだね)
少し前にシェイラに嫉妬した自分を、アンジェロは優しく見抜いていた。
ひょっとして、リュカが大好きで、バスチアンに嫉妬した幼い自分を思いだしていたんだろうか。
全ての真実を聞かされて、サーシャの瞳に涙が滲んだ。
バスチアンはそれを眺め、優しく微笑む。
「兄ちゃんは生きてるよ―――僕の中にも、君の中にも。それに僕は白い小鳥をよく見かけるんだ」
あ、と思わず口許に手をやり、サーシャが目を見開いた。
そういえばアンジェロがこの部屋で一度、白い小鳥を愛おしそうに撫でていたっけ。
「君はどうして、アンジェロを人間にしたかったの?」
そう、サーシャが幸せの羽根に願ったのは
アンジェロを人間の男の子にすることだった。
「だって、僕は人間になりたい、って。アンジェロはそう言ってたんだもの」
今になっても考える。
どうしてアンジェロは人間になりたかったのだろう。
「兄ちゃんはね、反対にずっと、天使になりたかったんだよ」
『………』
「兄ちゃんは綺麗な天使のアンジェロを羨ましがってた」
誰でもいつだって、自分にないものを追い求める。