lacrimosa







『僕ね、人間になりたいの』



アンジェロが唐突にそんなことを切り出す。

今日も青空が広がる開いた窓から、白い小鳥がスッと飛んできてアンジェロの肩に止まった。

見守るように、優しく、小鳥は彼を見つめていた。




「どうして?人間なんかより天使のほうがずっといいよ」


乾いた半笑いをこぼしながら、サーシャが問う。

愛しさと憂いのこもった眼差しで小鳥を見ていたアンジェロは、ゆっくり首を振った。




『綺麗なものってね、案外綺麗じゃなかったりするんだよ』


アンジェロの言葉の意味が、サーシャにはわからない。



『人間のほうが汚いことを知っているから清くいれるんだと思うんだ。両極が存在しないと、片側は引き立たないものだよ』



(……………?)



アンジェロの話は難しい。

サーシャは両眉をくっつけて必死で考える。



『美しさしか持たない天使が罪を犯したとき、それ以上の穢れってないと思わない?』



(……罪?)



そもそも、天使が罪を犯すわけないじゃないか。










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