lacrimosa
「だ、だけど、そんなに体調崩してまで、人間を助けることないじゃない」
わからないからつい、正反対に傷つける言葉を吐いてしまうのだ。
「何もブスなシェイラの犬なんか…」
『駄目だよ』
「…え?」
『醜い言葉を口にしたら、サーシャの綺麗な心まで汚くなっちゃうんだよ』
残念そうに目を細めて、アンジェロがサーシャをみる。
―――やだ、
(…みないで、みないで、)
(…そんな綺麗な目で私をみないで、)
(…失望したような目でみないで、)
(…こんなんじゃ、アンジェロに幻滅されちゃうよ)
『サーシャは彼女に嫉妬してるんだ。だからそんなこと言うんでしょう』
ああ、そうだった。
アンジェロにはすべてお見通しなのだ。サーシャの心の中は。
それでも、
「嫉妬なんかしてない…」
『嘘、素直じゃないね』
「アンジェロだって辛そうな癖に元気なふりして、素直じゃないもん…!
なによ、人間を助けるとかいっちゃって、全部自分が綺麗でいたいだけでしょ、」
(…あ)
一気にそうまくしたてたあと、口をついて出てしまった言葉に、サーシャは後悔した。
(…私、酷いこと、)
そうやっていつも、誰かを傷つけるこの口。
心で思うこととは反対のことばかりが飛び出す役立たずな口。
(…あぁ、私って、)