lacrimosa







***


―――12月24日

クリスマスイヴ。

今日はパパとママと3人で、お忍びで買い物に出掛けて来たのだ。

滅多にないクリスマスイヴの奇跡に、サーシャの機嫌はとても良かった。

真っ白なファーのコートに身を包み、通りのショーウィンドウの前でサーシャはくるりと回ってみせる。



(…これ、まるでアンジェロの羽みたい)



そんなことを思い、うふふ、と独りでに笑みが零れるのも一瞬で―――次の瞬間にはアンジェロが居ないという事実に顔を曇らせる。



(…アンジェロ、なにしてるのかな)



とうとうこの日が訪れても、未だ姿を見せてはくれないアンジェロ。

夜空を見上げればシンシンと降り注ぐ粉雪が頬に落ちる。

冷たくて、綺麗で、

雪の合間に彼の姿を捜した。



(…アンジェロ、雪だよ、)



幸せの羽の有効期限はいよいよ今日に迫った。

あの羽をつかってする願い事はもう決まっている。

家に帰ったら日付が変わる前に実行しようと意気込んで、サーシャは両親のあとを追い店の中へ入った。










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