lacrimosa
家に帰ると使用人たちの作ったご馳走が並び、久しぶりに家族揃って晩餐を囲む。
もしかしたらアンジェロが部屋に来ていないかと確かめに行ったものの、やはり彼の姿はなかった。
青空が晴れ渡る穏やかな日の午後にしか姿を現さない彼のことだ、いくらクリスマスイヴとはいえ、雪降る夜に来るはずはない。
「―――ねぇ、パパ?」
「なんだい、サーシャ」
オードブルとサラダが下がり、メインの肉料理が運ばれてきたころ。
向かい合って座りながら、サーシャが躊躇いがちに父親に話しかける。
「私もっとパパとママと一緒に過ごしたいの。お仕事するより、一緒に居たいの」
それは彼女なりの精一杯の勇気だった。
そんなことを言ったらもう、可愛がってはもらえないかもしれない。
女優の娘として失格かもしれない。
「ママ、病院に行かなくてごめんね。ママが具合悪いときは、これからは私が看病するからね」
けれど、それはアンジェロがくれた贈り物だったから。
サーシャは一歩歩み寄ることを決意したのだ。
(…アンジェロ、)
まずは、自分が変わらなければならない。
アンジェロがそう言っていたように。