lacrimosa
『…サーシャが側に居てくれれば、…僕は、いいから』
呼吸の合間にそう呟く。
耐え難い苦痛の中に身を投じているはずなのに。
本当に、幸せそうな顔をする。
「アンジェロ、ごめんなさい。私、この前酷いこと言って。
私ね、ちゃんとパパとママに気持ち伝えたよ?
アンジェロの言う通り、2人とも優しかった。ありがとう、アンジェロ、ありがとう…ずっと、ずっと言いたくて…なのに…ねぇ、アンジェロ…」
(…どうして、こんな)
『うん、知っ、てる…。サーシャの…心の声は…全部、聴こえて、いるから。
…良かったね、サー、シャ』
必死に顔を歪めて微笑もうとするアンジェロ。
サーシャはすっかり取り乱して泣いたらいいのか笑ったらいいのかもわからないでいた。
『ねぇ、サァ、シャ』
「………、!」
『サーシャは、幸せに…なれた?』
(…え)
縋るような潤んだ瞳で、アンジェロはサーシャに問いかける。
『僕が来てから、…。楽しかった?』
そんなの、楽しかったに決まってる。
なんでそんな事訊くのと、心の声が聴こえているならそんなこと解りきっているはずなのに敢えて問いかけるアンジェロに、サーシャは不安でいっぱいの胸を抑えながら、眉尻をさげた。
『だっ、て…。サーシャが幸せじゃないと僕、困るから、』
消え失せそうな光を、悪戯そうに瞳に宿して微笑む。
アンジェロが笑えば笑うほど、穏やかな気持ちでいられない。
刻々と、何かが迫ってくるのを感じる。
―――ねぇ、アンジェロ
(…私の胸の奥、どうしてこんなにザワザワ暴れてるの?)