lacrimosa
「ねぇ、私、可愛い?」
『可愛いですよ、お嬢様』
「ねぇ、私のどこが可愛い?」
『お母様とそっくりの美しいブロンドに青く澄んだお父様の瞳、それにその白く透き通った肌に、真っ赤な唇。
全て、お綺麗で可愛らしいです』
「――つまんない」
(…作り笑いなんか浮かべて、お世辞ばっかり)
全身鏡の前に立っていたサーシャは、鏡越しに世話係のエレナから目を逸らした。
(…つまらない、つまらない、つまらない)
「…楽しく、ない」
そう小さな声で呟いて、部屋の奥の柔らかな純白のシーツに身を投じる。
ボフ、とやけに優しげな音が響いてサーシャの胸の奥は余計にざわめいた。
「…楽しくない」
何をしても、何を言っても、すんなりと受け入れられてつまらない。
このシーツも、さっきのエレナも、貼り付けたような柔らかさでサーシャに接するのだ。
(…みんな、偽物)