lacrimosa
アンジェロはもう、どこにも居ない。
「…ね、ぇ」
「…ね、ぇ」
呼んでも、誰も答えない。
「…いっちゃった、の?」
ツー、と両頬を静かに流れるそれを感じながら、呆然と呟く。
「…ねぇ」
譫言のように、何度も、何度も。
けれど返事はない。
静謐な広い部屋に響く己の小さな小さな虚しい声。
小刻みに震える体をなんとか保ち、呼吸を拒む肺に無理やり酸素を溜め込んで…
サーシャはゆっくりと瞼を閉じた。
そして
そしてもう一度心の中で願う。