lacrimosa
バサバサバサバサ…!
「―――こんにちはぁ」
「きゃっ!なに…!」
突如、羽音とともにサーシャの視界が陰る。
反射的にぎゅ、と瞑った目を、事態を把握するべく恐る恐る開けてみる。
「―――あ、あなたは」
突然窓から滑り込み、開けた視界の先に現れたのは
「お姉ちゃん、サーシャって名前だよねぇ?」
「は、え、うん」
きょとん、とした表情を浮かべて目の前に立つ少年だった。
それは灰色の羽をした、
(…堕天、使?)
「あー、よかった。僕、方向音痴だから間違えたかと思った」
「…………え、」
「えっとねー、お姉ちゃん、天使の羽に願い事したでしょ?実はそれ、実行した例が今までにない願い事でさ…」
部屋を行ったり来たりしながら、こちらの反応など気にもせずにペラペラと話しだす少年。
その面影はどことなくアンジェロに似ていた。
けれど違っているのは、彼は瞳も髪も灰色だということ。
「でね、僕が処理しにきたってわけ。
ねぇ、わかるでしょ?アンジェロのことだよ…」
『あなた、アンジェロを知ってるの?』
アンジェロの名前を口にした彼に、サーシャが驚いて訊き返せば、彼はにっこり笑って頷いた。