lacrimosa
けれどパパが僕を見なくなって、僕もそんな嘗てのヒーローの姿に失望する毎日を送るようになってからは…
僕自身、それに天使という存在すら慢心の創物であるような気がしてならなかった。
(…ママ、どうして?)
ママは何がしたかったんだろう。
パパを愛していたんじゃないの?
人間の男の人を好きになったのなら、何で死んだりなんかしたの?
僕も天使の仕事をしなくなって、人間の世界をぼんやりと眺めるようになった。
そこは天上よりも醜く、汚く、下卑たものこそ多かったが、美しいものだってあった。
(…あの子は凄く、綺麗だな)
お芝居や音楽――芸術、そういう天上にはないものだってあった。