lacrimosa
ママのように違う男の人を好きになって毎日泣いている女の人を何人も見つけた。
(…わかんないや)
天使と人間はどう違うんだろう。
ママやパパだって立派な天使だったけれど、あんな風になっちゃったじゃないか。
(…僕は、)
先を歩く目標を失って、途方に暮れていた。
「ごめんな、アンジェロ…」
「パパはママが赦せないんだ」
「…憎い、んだ」
「―――ごめんな」
ある日、血の気の失せた生気のない顔をした“その人”は僕にそう言った。
大天使の象徴である金色の縁取りがなされたローブはところどころ破れ、頬も痩け、ブロンドの髪もぼさぼさだ。
(…………)
言葉なんて、でない。
僕の大好きだったパパが目の前にいる。それなのにもう彼はパパじゃない。
ごめんな、なんて台詞はいらないのに。もっと違う言葉がほしいのに。
笑ってくれない。頭を撫でてくれない。以前の頼もしいかけ声で僕を扇動してよ。
(…パ、パ)
―――悪魔
パパは悪魔に魂をあげちゃったんだ。
悪魔はパパの憎む心に漬け込んでパパを滅ぼした。
あっという間に、あっけなく、偉大な大天使は屈服してしまった。
憎しみはなんて恐ろしいんだろうと。本来天使にはあっていけない感情なのだ。
―――悲しみ、怒り、憎しみ、それに恐怖
天使はそんな劣情を抱いてはいけない。