lacrimosa
「リュカ!お前また遅刻だぞ!給料その分引いてやるからな」
アトリエまで駆けていくと、開口一番にベルナールさんの怒号をくらう。
へいへい、と気の抜けた声で返事をして形ばかりに敬礼を返す。
「…まったく。俺は今日シャンゼリゼ通りの向こうにあるお屋敷の貴婦人の要望で肖像画を描きにいくことになっとる。
お前はここらの画材を片付けて、床を磨いておけ」
頼んだぞ、そう言い残してベルナールさんは足早にアトリエをあとにした。
(…ふあー。眠い)
それにしても一日中ベルナールさんが居ないなんてラッキーだ。
あの大きなお屋敷の貴婦人は注文が多くて我が儘だから何回も描き直しさせられて、きっと夕方までは帰ってこない。