白頭山の残光
 仕方ないので、美里はソンジョンを自動券売機の所へ連れて行き切符の買い方を教えた。券売機そのものも珍しかったようだが、ソンジョンは別な事に感心していた。
「と言う事は……日本では金さえあれば、いつでもどこへでも行けるのか?当局の許可を取らなくても列車に乗ってどこへでも……」
「言っとくけど、韓国だってそうだからね」
 ソナが横から口をはさんだ。
「北韓に限らず、社会主義国でそういう移動制限があったのは知ってる。けど、中国でだって今時そこまでの統制はやってないわよ。あと、弁当票ってのは何?あたしもそれは聞いたことがないわ」
 ソンジョンが呆気に取られた表情で答えた。
「旅行先で食事をするための、食券だ。それがないと泊まっている旅館で食事を出してもらえない。もちろん闇市へ行けば食事は出来るが、値段が法外だから。だが……君たちの様子では、そんな物は日本にはないのか?」
「韓国にも、よ!金さえあれば、どこへ行こうと行った先で食堂で何でも食べられるし、店で何でも買える。いいかげん、慣れなさいよ!」
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