白頭山の残光
それから三日間、美里はソナに連れられて研究所の周囲を遠くから視察し、潜入の準備を手伝わされた。ソンジョンは携帯食料やキャンプ用品などを調達に走り回った。彼が言うには、1994年の北朝鮮ではまだ食糧などの配給制度や社会の監視機構が機能していて、現地で食料や物品を調達するのは難しいからだ。
当時は地方でも闇市は珍しく、まして平壌では仮にあったとしてもそこへ足を踏み入れるのは危険過ぎる、とソンジョンは言っていた。だから食料などの必要な物は、時空の穴に突入する前にここで調達しておかなければならない。
時空の穴への突入は7月6日の夜に決まった。企てている事の内容からして早い方がいいように思えたが、美里がある懸念を二人に伝えたからだった。
1994年には、美里もソナもソンジョンも既に生まれている。日本、韓国、北朝鮮の別の場所とはいえ、幼少時の三人がその時代にいた事になる。同一の時空に同一人物が複数存在する事は本来あり得ない。三人が行おうとしているタイムトラベルは、その時空の矛盾を生じさせる事になるから、時空全体にどんな思いがけない影響があるか分からない。
研究所の所員や自衛隊の特殊な隊員らしき人物が、何度か向こうの様子を探りに一時間程度行っているから短時間ならそう深刻な影響はないはずだ。だが、数日もの間未来から来た人間が三人も滞在したら、時空そのものに何かとんでもない影響が生じる危険も否定できない。だから、穴の向こうの世界、1994年の北朝鮮に滞在する時間は可能な限り短い方がいい。この点はソナもソンジョンも納得してくれた。
当時は地方でも闇市は珍しく、まして平壌では仮にあったとしてもそこへ足を踏み入れるのは危険過ぎる、とソンジョンは言っていた。だから食料などの必要な物は、時空の穴に突入する前にここで調達しておかなければならない。
時空の穴への突入は7月6日の夜に決まった。企てている事の内容からして早い方がいいように思えたが、美里がある懸念を二人に伝えたからだった。
1994年には、美里もソナもソンジョンも既に生まれている。日本、韓国、北朝鮮の別の場所とはいえ、幼少時の三人がその時代にいた事になる。同一の時空に同一人物が複数存在する事は本来あり得ない。三人が行おうとしているタイムトラベルは、その時空の矛盾を生じさせる事になるから、時空全体にどんな思いがけない影響があるか分からない。
研究所の所員や自衛隊の特殊な隊員らしき人物が、何度か向こうの様子を探りに一時間程度行っているから短時間ならそう深刻な影響はないはずだ。だが、数日もの間未来から来た人間が三人も滞在したら、時空そのものに何かとんでもない影響が生じる危険も否定できない。だから、穴の向こうの世界、1994年の北朝鮮に滞在する時間は可能な限り短い方がいい。この点はソナもソンジョンも納得してくれた。