白頭山の残光
そして7月6日の夕方、研究所への潜入を前に三人は近くの和食レストランの個室で、景気づけの食事をする事にした。この二人と会ってから、ラーメン、そば、パン、カップ麺などばかりで、一度もちゃんとした食事をしていなかったせいもある。時間旅行という大冒険の前には腹ごしらえは大事だ。
ソンジョンとソナはそれぞれ、美里が三歩で根を上げるほど思いリュックを背負ってきた。1994年の北朝鮮で必要な品物をしまってある。美里は、あの軍服みたいな自分用の服とわずかな携帯食料を入れた小さなリュックを持ってきた。
食事が運ばれて来て、ウェイトレスが出ていくとソンジョンが自分の飯椀を前に差し出して美里に言った。
「いや、これはいくらなんでも申し訳ない。君が栄養不足だったとは」
「あんた、あたしにケンカ売ってんの?」
そこは健康食メニューが売りの店で、美里は雑穀入りのご飯を頼んでいた。研究員という仕事は室内にこもりがちなので、最近美里はウェストの肉の付き具合が気になっていた。ダイエットのために雑穀ご飯を食べるようにしていたのだが。しかしソンジョンはこれだけは譲れない、という口調でなおも言い張った。
「無理やり巻き込んで協力させている君に雑穀を食べさせて、俺たちだけが白米を食べるわけにはいかない。俺の事なら気を遣わないでくれ。俺は特殊部隊の隊員だから、普段でも白米6割、トウモロコシ4割の飯を毎日食べていた。肉だってひと月に二度も出ていた。だから俺の栄養状態は心配ない」
「いや、あのね」
ツッコミを入れかけた美里をソナが手で制した。そしてソンジョンに向けて、今まで聞いた事のない優しい口調で言った。
「そうは言っても、過去の北朝鮮に行ったら、あんただけが頼りなのよ。だから思いっきり栄養をつけておいてもらわないと、何かあった時にあたしや美里が危険になる。これは美里自身の安全のためなの。だから食べておきなさい」
ソンジョンとソナはそれぞれ、美里が三歩で根を上げるほど思いリュックを背負ってきた。1994年の北朝鮮で必要な品物をしまってある。美里は、あの軍服みたいな自分用の服とわずかな携帯食料を入れた小さなリュックを持ってきた。
食事が運ばれて来て、ウェイトレスが出ていくとソンジョンが自分の飯椀を前に差し出して美里に言った。
「いや、これはいくらなんでも申し訳ない。君が栄養不足だったとは」
「あんた、あたしにケンカ売ってんの?」
そこは健康食メニューが売りの店で、美里は雑穀入りのご飯を頼んでいた。研究員という仕事は室内にこもりがちなので、最近美里はウェストの肉の付き具合が気になっていた。ダイエットのために雑穀ご飯を食べるようにしていたのだが。しかしソンジョンはこれだけは譲れない、という口調でなおも言い張った。
「無理やり巻き込んで協力させている君に雑穀を食べさせて、俺たちだけが白米を食べるわけにはいかない。俺の事なら気を遣わないでくれ。俺は特殊部隊の隊員だから、普段でも白米6割、トウモロコシ4割の飯を毎日食べていた。肉だってひと月に二度も出ていた。だから俺の栄養状態は心配ない」
「いや、あのね」
ツッコミを入れかけた美里をソナが手で制した。そしてソンジョンに向けて、今まで聞いた事のない優しい口調で言った。
「そうは言っても、過去の北朝鮮に行ったら、あんただけが頼りなのよ。だから思いっきり栄養をつけておいてもらわないと、何かあった時にあたしや美里が危険になる。これは美里自身の安全のためなの。だから食べておきなさい」