お隣サンは元彼クン
『司くんが、いたからって…あんた司くんに柊ちゃんの事なんて言ったの?』
『…何も言ってない。同じ学校だったとかも一切言ってない』
『なんでぇ!!幼なじみとでも言えばよかったのに』
『なんとなく言いだせなかったのよ…』
『そう。でも、友達とかが遊びに来たりとか何かの拍子にバレたりとか、そんなのは隠せば隠すほど司くんが傷つくわよ』
『わかってる。だからちゃんと話すから、ただの同級生だって』


『南、知ってるか知らないけど柊ちゃんイラストレーターの仕事してるんですって。で、たまに大きな画書いてコンクールに出展してるらしいわよ』
『そう』
『でね、家でする仕事だから、ほとんど家にいるらしいわよ』
『ふーん』
『ふーんって、お母さんが、心配してんのは、こんなに近くに、ましてや隣に住んでたら、あんたの気持ちも、もしかしたら柊ちゃんの気持ちも昔に戻っちゃうんじゃないかって事よ』
『そんな事あるわけ…』
『ないわよね、あったら困るから。あなたは、もう司くんの妻なの。拓の母親なの。それだけは覚えておいてね』


母は、よほど心配なのか何度も念押しして帰って行った。
あたしだって、それくらいわかってるやい。
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