お隣サンは元彼クン
ピンポーン
ちょっと緊張しながらチャイムを慣らす。遠くから足音が近づいてきた。
ガチャ
『おーサンキューな。助かった。』
『じゃ。』


一言しか言えてないしぃーー!!こんだけ?コレだけ気合いいれて緊張してこれだけ?

帰ろ。
と思ってドアから離れようとした瞬間
『南』
という声とともに、林檎が1個、アーチを描いて飛んできた。
『ナイスキャッチ!それ、お礼。ちゃんと子供にも食わせてやれよ』
『あぁありがとう。でも何よそれ。ちゃんと食べさせるわよ、あたし』
『だってお前、昔、俺の親が林檎むくと、必ず俺の分まで食ってたもんな』
『そんな事ないよ!』
『とられた方は覚えてるもんだよ。いつも、あれ、あたし何切れ食べたかわかんなくなっちゃった!とか言って結局、俺の分まで食ってたもんな』
『そうだっけ?』
『そうだよ、だから、子供には、ちゃんと食べさせろよ。』
『わかったわよ!じゃね』
『南、子供の名前なんていうんだよ?』
『たく…漢字は開拓の拓』
『ふーん、じゃあ拓によろしく』
『はいはい』

そう言って柊二の部屋をあとにした。
林檎を握りしめながら。
なんだか、たくさん話せた事がうれしかった
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