妹神(をなりがみ)
 ところが校舎を出たところで住吉の子分の一人が俺たちのそばへやって来て俺に耳打ちするように言った。
「遠野さん、遠野さん……見慣れないよその学校の生徒が、遠野さんを探して今校門の所にいるんですが」
「え?俺を訪ねてきた?」
「何か、心当たりはおありですか?もし遠野さんに因縁つけに来たのなら、俺らでシメときますが」
「い、いや。それはないだろ。大丈夫だよ、美紅もいるんだし」
「そうですか。けど、何かあったらいつでも言ってください。住吉さんからも、みなさんを陰ながら見守れ、と言われてますから」
「ああ、そ、そりゃどうも」
 ううむ、ありがたいような、迷惑なような……とにかく、その不良君にはお引き取り願って俺は校門の外にいるという、俺を訪ねて来たという学生の姿を探した。それはすぐ見つかった。
 俺の学校の制服は、冬は詰襟と紺のセーラー服という昔ながらのやつ。夏場は男が白い開襟シャツで女生徒が半袖の白のセーラー服。そいつは胸にワッペンのついた白いシャツに下は深い緑色の地に赤い細い格子縞の入ったズボンだ。冬場は上がブレザーになるタイプの制服なんだろう。よその学校の生徒だと一目で分かる。俺は遠くからそいつの姿を見ながら……
「ちっ、なんだ、男か」
 すかさず絹子がツッコミを入れた。
「真っ先にそこに反応するな!」
 近づくにつれ、俺はなんだかそいつに見覚えがあるような気がしてきた。あのデザインの制服も以前どこかで見たことがあるような気もする。だが、すぐには思い出せない。その他校の生徒は、なぜか青ざめた顔色で、落ち着かない様子でしきりにあたりを見回している。何かにおびえているようにも見える。
 まさか、美紅を用心棒に貸してくれって話じゃないだろうな。それに一見して住吉のグループのような不良には見えないし。
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