妹神(をなりがみ)
 悟は一瞬信じられないといった感じで俺の顔を見つめ、意味ありげに言う。
「おまえ……ひょっとして知らないのか?例の中3連続殺人の事を……」
「いや、それは知ってるよ。今日もその件で緊急全校集会あったぐらいだから」
「あれは純の仕業なんだ!」
 悟はそう叫び、俺は目を丸くした。
「ジュン……純って、まさか深見のことじゃないよな」
「そうだよ、深見純だよ、あの純だよ。おまえ、ほんとに何も知らないのかよ!」
 最後の方は声が裏返っていた。変だ。悟のやつ、間違いなく何かにおびえている。でも、そんな馬鹿な。
「とにかく、雄二、その場所へ必ず来てくれよ!絶対だぞ。俺は今から隆平を呼びに行くから」
 一方的にまくし立てると悟は、もう俺の方を振り向きもせず、一目散に駅のある方向へ走り去って行った。
 俺はしばらく呆然としてその場に立ち尽くしていた。一体何を言ってるんだ、あいつは?たまりかねた様に絹子が俺の肩をつついて訊く。
「な、なんなのよ、今の話?あんたの小学校の同級生、その純って子が連続殺人犯だってことなの?」
「いや、それは二百パーセントないよ」
 俺は答えた。そして続けた。
「その深見純ってのはさ、もう死んでるんだ。小六の二学期だったかな、校舎の屋上から飛び降りて……自殺したんだ」
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