妹神(をなりがみ)
で、放課後。俺が校門を出ると同じクラスの松田絹子に呼び止められた。
「おーい、雄二。ちょっと来―い」
こいつとは中学三年間同じクラスだが、はっきり言って女の子とか異性と意識しないで付き合える悪友だ。俺は絹子の方に歩きながらいつものように毒舌を吐いてやった。
「ねえ、雄二くーん、来てくれなーい、とか、もっと女らしく言えんのか?おまえは。だからいつまで経っても彼氏できねえんだよ」
「はん!彼女いない歴イコール人生の長さのあんたにだけは言われたくないわよ!」
絹子が毒づき返す。俺たちの会話はいつもこんな調子だ。と、俺は絹子の横に見慣れない女の子がいる事に気付いた。夏服のセーラー服だが、この辺では見た事のない、妙にクラシックなデザインの制服だ。背中まで伸びた長いストレートの黒い髪。頭一つ俺より背が小さいし、雰囲気的に年下のチューボーだろ。
異様なのは富士山でも登れるんじゃないかってぐらい馬鹿でかいリュックサックを背負っていた事だ。手にはメモ用紙一枚。絹子がそれをのぞきこんで俺の方に顔を向け直して言う。
「ねえ、あんたのお母さんの下の名前何だっけ?」
「え、美紀子だけど」
「じゃあ、やっぱりあんたの家よ、この子が探してるのは」
「へ?」
俺はあらためてその小柄な見知らぬ女の子を見た。まだ幼い感じの残る顔立ちだが、これは「美少女」と言っていい。目が大きくぱっちりしていて、細身で、肌の色はこの季節にしては小麦色に焼けている。でも何となく垢抜けないというか、田舎者っぽい雰囲気全開な感じだが。
「おーい、雄二。ちょっと来―い」
こいつとは中学三年間同じクラスだが、はっきり言って女の子とか異性と意識しないで付き合える悪友だ。俺は絹子の方に歩きながらいつものように毒舌を吐いてやった。
「ねえ、雄二くーん、来てくれなーい、とか、もっと女らしく言えんのか?おまえは。だからいつまで経っても彼氏できねえんだよ」
「はん!彼女いない歴イコール人生の長さのあんたにだけは言われたくないわよ!」
絹子が毒づき返す。俺たちの会話はいつもこんな調子だ。と、俺は絹子の横に見慣れない女の子がいる事に気付いた。夏服のセーラー服だが、この辺では見た事のない、妙にクラシックなデザインの制服だ。背中まで伸びた長いストレートの黒い髪。頭一つ俺より背が小さいし、雰囲気的に年下のチューボーだろ。
異様なのは富士山でも登れるんじゃないかってぐらい馬鹿でかいリュックサックを背負っていた事だ。手にはメモ用紙一枚。絹子がそれをのぞきこんで俺の方に顔を向け直して言う。
「ねえ、あんたのお母さんの下の名前何だっけ?」
「え、美紀子だけど」
「じゃあ、やっぱりあんたの家よ、この子が探してるのは」
「へ?」
俺はあらためてその小柄な見知らぬ女の子を見た。まだ幼い感じの残る顔立ちだが、これは「美少女」と言っていい。目が大きくぱっちりしていて、細身で、肌の色はこの季節にしては小麦色に焼けている。でも何となく垢抜けないというか、田舎者っぽい雰囲気全開な感じだが。